バセドウ病のアイソトープ治療について
- アイソトープ治療の歴史と安全性
- どのような人がアイソトープ治療を受けるのでしょうか?
- アイソトープ治療を受けてはならない人
- 主治医と十分な検討が必要な人
- 副作用
- 実際の治療について
- アイソトープ治療後の注意事項
- 治療後の経過
アイソトープ治療の歴史と安全性
バセドウ病に対して放射性ヨウ素を使った初めての治療の試みは、1941年にアメリカで行われました。その後、多くの人が放射性ヨウ素治療(アイソトープ治療)を受けてきましたが、治療に用いられる量のアイソトープが白血病や甲状腺癌を起こすという確定的な証拠はなく、アイソトープ治療は比較的有害事象の少ない治療法と考えられています。
現在、アメリカではバセドウ病患者のおよそ3人に1人がアイソトープ治療を受けています。日本でも、1998年から500メガベクレルまでなら専門医療機関の外来で治療ができるようになりました。ただ、病状によっては入院して治療する場合もあります。
どのような人がアイソトープ治療を受けるのでしょうか?
バセドウ病には薬物療法、手術療法とアイソトープ治療があります。アイソトープ治療は、次のような患者さんには良い適応と考えられますが、主治医と相談して実施を検討してください。
- 抗甲状腺薬で副作用が出現した
- 抗甲状腺薬中止後に再発した
- 手術後にバセドウ病が再発した
- 抗甲状腺薬で十分コントロールできない
- 糖尿病、心臓病、肝臓病などの慢性疾患を持っている
- アイソトープ治療を希望する
アイソトープ治療を受けてはならない人
主治医と十分な検討が必要な人
副作用
効果に個人差があり、アイソトープの量を多くすると10年以内には、ほとんどの人が甲状腺のはたらきが落ちること(甲状腺機能低下症)になります。たしかに甲状腺機能低下症は放置するわけにはいきませんが、甲状腺ホルモン薬を服用すれば、ほとんど問題はありません。甲状腺ホルモン薬の成分は体の中にある甲状腺ホルモンと同じものですから、基本的には適正な量を服用している限り副作用はありません。また、1年以上経過すれば、検査の頻度も半年~1年に一度でよく、経済的とも言われています。
アイソトープ服用後に一時的に眼症状が悪化することがまれにあります。そのため、アイソトープ服用時に予防的にステロイド剤を服用することがあります。また、アイソトープ服用後にまぶたの腫れ、物が二重に見えるなどの症状が増悪した場合はステロイド剤などで治療します。
実際の治療について
治療はアイソトープのカプセルを服用して行われます。治療用のカプセルを服用する前に、甲状腺にどれくらいアイソトープが取り込まれるか摂取率検査をします。検査用のアイソトープのカプセルを服用後一定時間の後に、甲状腺へのアイソトープの取り込み具合(摂取率)をみて治療に用いる投与量を決めます。(投与量決定のための摂取率の測定は行わない場合もあります。)
1~2週間前から投与2日後まで、控えていただく食べ物など
海藻類(昆布、ひじき、ワカメ、のり、寒天など)、ヨウ素強化卵、昆布だしの入った調味料は取らないでください。
ヨウ素を多く含む医薬品(うがい薬、ヨード造影剤など)の使用も避けるようにしましょう。
抗甲状腺薬(メルカゾール、チウラジールまたはプロパジール)
病状により治療4日~14日前から中止し、治療後3日目から開始します。
無機ヨウ素剤(ヨウ化カリウム丸)
病状により治療3日~7日前から中止し、治療後3日目から開始します。
ベータ遮断薬やカルシウム拮抗薬(脈を少なくするクスリ)
病状により、甲状腺機能が落ち着くまで服用します。
アイソトープ治療後の注意事項
服用したアイソトープのうち、甲状腺に取り込まれなかったものはほとんど尿中に排出されます。ほんの少し汗や唾液からも排出されるため、微量の放射線が出ていることをご本人に認識していただく必要があります。
他の人に被ばくを与えないように、日常生活で以下のような注意事項を守っていただきたいと思います。
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3日間は、充分に水分を取りましょう。早くアイソトープを体外へ出すためです。
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3日間は、お手洗いでの排泄後2度水を流してください。男性の場合、尿の飛散による汚染を軽減させるため、便座に座り排尿してください。
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3日間は、お風呂は最後にお入りください。汗に少量のアイソトープが出るからです。ただし、シャワーだけの場合は最初に入っても結構です。
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3日間は、タオルや衣類は他の人と共用せず、洗濯も分けて行ってください。
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3日間は、一人で寝てください。3日間はキスやセックスは避けてください。唾液や体液に少量のアイソトープが出るからです。
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7日間は、子供や妊婦と親密に接触(距離1メートル以内)すること、近くで長時間過ごす(添い寝など)ことなどは避けてください。15分以上子供を抱かないようにしましょう。子供や妊婦と接する機会のある職業の方は、少なくとも1週間は休職し、休職期間については主治医の指示に従ってください。
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6ヶ月間は、避妊をしてください。妊娠に際しては甲状腺機能の安定化が望まれますので、主治医にご相談ください。
治療後の経過
1~2ヶ月後には治療効果が現れてきます。3~4ヶ月後に一時的、または永続的に甲状腺機能低下状態になることがあります。甲状腺ホルモンが低下した場合は、甲状腺ホルモン薬を服用してもらうことがあります。甲状腺機能低下が持続する場合は、甲状腺ホルモン薬を服用し続ける必要があります。治療効果を見るために4ヶ月間は月に1回程度の間隔で受診していただきます。
治療効果が出てくると甲状腺の腫れは小さくなります。アイソトープ治療でバセドウ病が治り、甲状腺ホルモン薬を服用するようになった場合での再発はまれです。
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バセドウ病のアイソトープ治療Q&A
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